フードロス(食品ロス)とは、売れ残りや期限切れ、食べ残しなど、本来は食べられるにもかかわらず廃棄されている食品の事をさします。
可食部以外(お肉屋魚の骨など)やもともと食べられない部分があり廃棄された食品は食品廃棄物といい、世界で毎年13億トンもの量が廃棄されています。これは世界の食品生産量の約3分の1にあたります。
日本国内では食品廃棄量は年間2550万トン、そのうち本来食べられるのに捨てられる食品は612万トンと東京ドーム約5杯分の食品が1年間に廃棄されています。一人当たりで考えると1年間で約48kgの食品を捨てており、1日で換算すると毎日お茶碗一杯のご飯を捨てているのと同じ量になります。
世界では8億人以上の人が充分なご飯を食べられない飢餓状態にあります。
その人々への世界の食品援助量が約320万トンなので、日本のフードロスだけでみても援助している食品の約2倍の量が捨てられているということになります。
また、新型コロナウイルスの影響により、飲食店やホテルの休業、学校給食の中止に追い込まれました。冷凍保存などで対策していた食品メーカーも、コロナが長期化することでやむなく廃棄したケースも少なくありません。さらに、オリンピック開催に向けて、農林水産省は生産者に食品の生産量を増やすよう指示しており、その打撃は測りきれません。
フードロスはなにが問題なの?
食品廃棄が多いことは、環境面、経済面、社会面から様々な問題を発生させています。
環境面での問題点
余って捨てられた食べ物はごみとして出されます。生ごみは可燃ごみとして処分されますが運搬や焼却の際に二酸化炭素を排出します。また食品ゴミの水分は焼却施設の発電効果も低下させてしまうようです。焼却後の灰の埋め立ても環境の負荷につながりますね。
また食品の生産に必要な水や土、エサなども無駄になってしまいます。牛のエサになるトウモロコシや豆を育てるには広大な土地が必要ですが、そのような資源も無駄にしているということになります。
土地だけでなく、食品ができるまでには大量の水も必要です。牛肉1kgをつくるのに牛が食べるエサを育てる水から計算すると2万7000リットルが必要と言われています。
ハンバーガー一個をつくるのに使われた水の量は、パンの原料である小麦、トマト、レタス、牛肉が出来るまで3000リットル(お風呂の浴槽15杯分相当)になります。買いすぎたからとハンバーガー一個を捨てるということがどれだけもったいないか分かりますね。
経済面での問題点
スーパーなどで売られている商品のお値段には廃棄費用も含まれているため、フードロスが増えると小売価格が上がってしまいます。また、フードロスの焼却は税金が使われているのをご存知でしたか?
社会面での問題点
食糧資源の分配が不均等なため、貧困や飢餓など格差がうまれてしまいます。世界の人口は約77億人ですが、2050年までに20億人も増えるといわれており、フードロスへの対策をせずに今の状態が続けば、人口増加によって栄養不足で苦しむ人がますます増えると言われています。
日本は多くの食べ物を海外からの輸入に頼っています。1965年には70%あった日本の食料自給率は約40%にまで低下しており、先進国の中でも最低水準です。残りの60%を輸入でまかなってるにもかかわらず、多くの食品ロスを出していということは、国内だけでなく世界のエネルギーを使って生産されているものを廃棄していることになるので、社会全体で食品ロスを見直していく必要があります。
フードロスが出てしまう原因
フードロスは、飲食店や食品製造業などからでるフードロスを「事業系食品ロス」、各家庭から出るフードロスを「家庭系食品ロス」の二つに分けることができます。
612万トンのうち事業系食品ロスは328万トン、家庭系食品ロスは284万トンとなっています。事業系食品ロスはさらに4種類の、食品の製造を行う「食品製造業」、生産者と売り先を繋ぐ「食品卸売業」、コンビニやスーパーなどの「食品小売業」、レストラン・居酒屋などの「外食産業」に分類されます。
食糧廃棄が発生する原因は様々ですが、主な理由として
- 製造・卸・小売り事業の中では「製造、流通、調理の過程で発生する規格外、返品、売れ残りなど」
- 外食産業では「食べ残し」
- 家庭では「手つかずの食品」「食べ残し」
があげられます。外食産業では宴会で14.2%、披露宴で12.2%、食堂・レストランで3.6%の食べ残しのデータがあります。(農林水産省平成27年度調査)
日本は世界に比べフードロスの発生量が多く、日本人特有の高すぎる安全志向も問題になっています。原因をいくつか見ていきましょう。
見た目重視
傷のある商品やカタチが変形している商品などは規格外になってしまい選ばれないという傾向にあります。
過度の鮮度志向
生ものを昔から食べていた私たちは鮮度が落ちていることに敏感です。「消費」期限を過ぎたものは安全上問題がありますが、風味が落ちた「賞味」期限に対しても敏感で、これを即廃棄にするのはもったいないと感じます。
需要予測ミス
出荷が足りなくて売れるチャンスを逃すより余った方がいい、陳列棚に食品が少ないよりたくさん積まれた方が見栄えがいいと考える傾向にあり、ある程度の予測は立てて仕入れはしているもののギャップが発生してしまっています。
3分の1ルール
製造日から賞味期限までを3分割し、販売は3分の2の期日をしているという暗黙のルールがあります。製造・卸・販売それぞれに納品期限を設けているため、各段階で在庫を抱えやすい状況にあり、フードロスの原因に大きく関係しています。
フードロスを減らすために私たちにできること
まず簡単に意識を向けることができるのは、家庭内のフードロスを減らすということです。日常生活でどのようなことに気をつければいいのでしょうか。
家庭内のフードロスは大きく「直接廃棄」「食べ残し」「過剰除去」の3つに分けられます。それぞれの原因の例と対策を見ていきましょう。
直接廃棄
買いすぎ
ついついセールや食欲にかられて消費できない量の食品を買ってしまうことです。買い物に出かける前に冷蔵庫の在庫をチェックしたり、チラシをみてあらかじ買うものをきめておくなどして買いすぎを防ぎましょう。
保存方法が悪い
多く買ってしまったとしても、保存方法によって長持ちする食品もあります。漬物やピクルスにしたり、冷凍保存するなどして保存します。保存が悪く野菜室で野菜がしなびてしまう前に下茹でして冷凍保存してくと、料理の時短にもなります。
食材の調理方法がわからない
料理初心者あるあるなのですが、つくりたい料理をつくったあと、余った食材が使い切れずなかったという経験はありませんか?料理のスキルが上がれば、余った食材で全く別のレシピが作れるようになるのですがなかなか難しいと感じる人もいるかもしれません。
昔は本やテレビで紹介されたレシピをもとに作っていましたが、今はもっと便利な時代。インターネットで沢山のレシピが調べられます。使いたい食材をランダムに入力するだけで、簡単なレシピがすぐ出てきますよ。
贈り物でもらった食材
お中元やお歳暮、実家からの仕送りやお見舞い品など、人からもらった食材が食べ方が分からない、なんとなく食べる気がしない、好みじゃないといった理由で消費期限がきれ捨ててしまったという経験が一度はあるかと思います。そんな食べなかった食材を、フードバンクという食べ物に困っている施設や人に寄付することができます。また、自分が人に食品を贈る時は、あらかじめ好みのものを聞いたり、好みが別れないものを選ぶように心がけましょう。
食べ残し
作りすぎ
お腹いっぱい食べたいし食べてほしいので、少ないよりは多めに作っておきたいですよね。なるべく食べきれる量をつくるのがベストですが、食べきれなかったものは次の日のお弁当にしたり、冷凍して保存したりと捨てない選択肢をしましょう。
食べ忘れていた
冷蔵庫に今度食べようと思って保存しておいた料理が残っていませんか?食べ残しをしまう場所を常に見える場所に固定にするなど、冷蔵庫の配置も工夫しましょう。
好き嫌い
好き嫌いが多いと一人当たりの食品ロスは増えます。最初からいれない、小さくして食べる、好き嫌いを減らすなど残さず食べる習慣をつけましょう。
過剰除去
調理技術が足りない
包丁での皮むきに慣れていないと、食べられる部分まで切り落としてしまいます。ピーラーなどを使えば薄くて素早く皮がむけるので料理の効率もよくなりますよ。
過度な健康志向
残留農薬を過度に気にするあまり、皮を分厚く切りすぎたり、葉物の外側を何枚も取り除いたりするとフードロスが増える原因に。農薬について調べて、適切な処理を学びましょう。
家の外でできるフードロス対策
家庭内でのフードロスを防ぐことに加えて、買い物をするときや外食をする際にも心がけたいことがいくつかあります。食品関連事業者でないかぎり生産や製造・卸や小売りにかかわることはできませんが、例えばスーパーなどで買い物をする時は、奥から商品を取らずに陳列されている順に買ったり、パッケージに傷や汚れがあっても中身に支障がないのならそのまま購入することでフードロスを減らすことができます。
外食をするときも食べきれる量を注文し、食べ残しや飲み残しがないようにしましょう。
生産者や小売業、飲食店など事業者から発生するフードロスを減らすサービス
328万トンもの事業から発生するフードロスは天候の影響、予約キャンセル、発注ミス、品ぞろえ維持など理由は様々。2020年は新型コロナウイルスによる飲食店やホテルの休業も大きな原因になりました。
そんな、食べられるのに余ってしまった食材を欲しい人が買うことのできるサービスや、在庫が大量にあまったり受注がなくなって事業に打撃を受けている業者を助けようというサービスが次々と誕生しています。どんなサービスがあるのかまとめたので、気になるサービスがあればぜひ利用してみてください。
フードロス削減サービス・アプリまとめ7選
TABETE
賞味期限や予約キャンセルにより捨てざるを得なくなった食品を、「レスキュー価格」として通常より安い価格で買うことができます。
店名と駅からの距離、引き取り可能な時間、販売価格が検索一覧で見ることができます。登録料や月額料などは不要なので、気軽に利用することができるので、気になる商品がある時だけの利用でも大丈夫です。
WakeAi
在庫を抱えた事業者や生産者、飲食店、卸売業者、小売業者、製造業の方が、ありとあらゆる商品や在庫などを「訳アリ商品」として出品・販売できる通販サービスです。通常より安い価格で購入できるほか、国産牛や天然魚など普段は買えない銘品や食品もお手頃価格で購入できるので、おうち時間で食事を楽しみながらフードロスを減らすことができます。
No Food Loss
廃棄予定になった食品のクーポンを手に入れることができるアプリです。使えるお店のほとんどがコンビニのポプラと生活彩家なので、使える範囲がわりと限られている点がデメリットですが、もし対象のお店が近くにあれば30%~50%オフで買うことができるのでとってもお買い得です。
テンダーバンズ
余ったパンに心を痛めていた兵庫県伊丹市出身のサンドイッチ店の店主が、廃棄予定のロスパンを再度焼いてもふんわりおいしいパンが食べられるよう冷凍保存できる方法を開発し、その技術を活用したハンバーガーのリベイク(焼きなおすこと)専門ブランドを立ち上げました。
電子レンジであたためてもパンがふやけずにふんわりしたハンバーガーを食べられるとのことで、外出自粛時でも人気を集めています。
JuniJuni
賞味期限間近の食品やパッケージ変更された日用品など、廃棄対象となってしまう商品をお手頃価格で購入できるサイトです。東京ガスが提案するロス削減の通販サイトで、売上の一部は社会貢献団体へ寄付することができます。
フリフル
果物と野菜に限定したフードシェアサービスで、傷が合ったりカタチが規格外だったりして市場に出回ることのない果物を当選でお届けしてもらえるサービスです。費用はゼロ円なので当選すればかなりお得です。
KURADASHI
800社以上の企業が参加しており、伊藤園や味の素、グリコやロッテなど有名食品をの取り扱いもあります。食品の他にも美容健康、日用品、雑貨などもあり、欲しい商品が見つかりやすいのでおすすめです。
まとめ
フードロスについて少しでも知ることができたでしょうか?筆者はご飯を残すことはめったにありませんが、ただもったいないから食べきるという意識だけで、世界的に問題になっているフードロスについて考えたことはありませんでした。世界で食べ物に困っている人たちのため、これから生まれてくる子供たちのため、地球環境のためにももっとフ―ドロス削減への意識を高めていこうと思います。