人生の3分の1は睡眠時間!快眠環境を整えましょう
ぐっすり眠れない……
なかなか起きられない……
寝起きがスッキリしない……
国民の5人に1人は、眠りに関する悩みを抱えているという調査報告があります。また、30人に1人は睡眠薬を服用しているのだとか。
人生の3分の1は睡眠時間。睡眠の質を高めることは快適な生活を送ることにも繋がります。
新型コロナウイルスの影響でおうち時間も多い今だからこそ、快眠のための基礎知識や入眠環境を作るポイントをチェックしておきましょう。
睡眠のメカニズム
人はなぜ眠るのか
睡眠には、ただ身体を休息させるだけではなく、心身のメンテナンスや日中の記憶を整理・定着させる役割があります。その中で最も重要なのが、脳を休ませるという行為。
睡眠の役割とは大脳を守り、修復し、よりよく活動させることである。発育初期には大脳を創り育てる役割もある。
『ヒトや動物はなぜ眠るのか』 井上昌次郎著
脳の消費エネルギーは1日当たり350~450kcalで、全体の20%以上と言われています。またとてもデリケートな器官のため、睡眠不足の状態が続くと脳が疲労してしまい、注意力や判断力、さらには記憶力の低下を招く恐れがあります。
レム睡眠とノンレム睡眠の2種類がある
睡眠は深い眠り「ノンレム睡眠」と浅い眠り「レム睡眠」で成り立っていて、約90分の周期で繰り返しています。ノンレム睡眠中は脳を休ませると同時に筋肉を弛緩させるので体の疲れを取り除くといわれています。正しい睡眠が取れていないと、この2つの繰り返しがうまくいかず、十分な休息が得ることができません。
ちなみに歳を取るにつれて睡眠時間は減り、60代以降になるとノンレム睡眠はほとんど見られなくなるそうです。
睡眠と時間
理想の睡眠時間とは
6~8時間くらいの睡眠時間が理想的と言われていますが、必ずしも全員に当てはまるとは限りません。個人の体質や年齢、生活スタイル、季節変動によって理想の睡眠時間は異なります。起床後の快適さや満足感が得られる自分なりのベストタイムを計測するのがよいでしょう。
寝はじめの約3時間が睡眠の質を上げる
成長ホルモンの分泌が促進されるのは寝はじめの約3時間。ノンレム睡眠は入眠後の約3時間で起こるといわれているため、質の良い睡眠を取るためのキータイムになります。また、成長ホルモンには新陳代謝を促す働きもあるため、美容の観点からも就寝直後は重要です。
寝だめについて
「週末に寝だめしよう」という方も少なくないと思いますが、実は寝だめには効果はありません。寝だめをすることで体内時計が乱れて、あらゆる不調を招いてしまうこともあるので注意しましょう。
体のコンディションを整える
適度な運動をする
運動は睡眠の質を高める
運動すれば寝つきが良くなったり、熟眠できる可能性があります。これは、運動を行うことでセロトニンの分泌が促され、それがメラトニンに変わりって睡眠の質を高めるためです。日光に当たりながらウォーキングなどの無理なく毎日続けられる運動を習慣にしたり、エレベーターやエスカレーターをやめて階段を使うといった心がけをしましょう。
布団の中で軽いストレッチ
寝る前にストレッチを行うと血液の巡りが良くなることで深部体温を下げ、寝付きをよくする効果があります。また、それだけではなく末端の冷え性も解消し、目覚めの良さや睡眠による疲労感を取り除く作用もあるのだとか。ただし、激しい運動は交感神経を興奮させて寝つきを悪くするので注意が必要です。
睡眠物質の分泌を高める
日中に太陽の光を浴びる
睡眠物質として知られるメラトニンは、日中に太陽の光を浴びることで、夜間によく分泌されます。朝日を浴びないと、体内時計が毎日少しずつずれていき、適切な時間にメラトニンが分泌されなくなる恐れがあるため、日中は積極的に外出しましょう。ちなみに曇りの日の照度でも体内時計をリセットするには十分です。
体温調節をする
冷えは眠りを妨げる
夜になると眠くなるのは、体温の低下と睡眠物質(ホルモン)の影響が大きいとされています。それだけにこの2つを上手にコントロールすることが、快適な睡眠とリフレッシュのために重要。冷えで悩んでいる人は体温調節がうまくいかないために、寝つきが悪く、不眠で悩む人も多いといわれています。就寝前に身体を効率よく温めるなど体温調整するようにしましょう。
お風呂からあがってすぐ寝る
睡眠直前の入浴は避けて、寝る60~90分前に38~40度程度のぬるま湯に10~20分ほど浸かるのがベスト。ぬるめのお風呂に入ることによって、手足の血管がしっかり開いて体温調整しやすくなるのです。夜はゆっくりと入浴し、足が冷えないうちに布団に入りましょう。
快眠ツボを押す
快眠をもたらす基本のツボと言われているのが、「労宮(ろうきゅう)」と「失眠(しつみん)」。「労宮」は、手を握ったときに人差し指と中指の先端の中間にあるツボで、「失眠」は、かかとの中央にあるツボです。緊張や不安で眠れない場合は、頭頂部にある「百会(ひゃくえ)」や胸の中央にある「膻中(だんちゅう)」、肩こりで眠れない場合は耳たぶの裏のくぼみあたりの「完骨(かんこつ)」や「安眠(あんみん)」を押すのもおすすめ。
睡眠環境を考える
質の良い睡眠へと導く部屋づくり
室内を暗めに
室内を暗めにするとメラトニンの分泌を促します。寝る少し前から照明を暗くし、眠りにつきやすい環境を整えることを心がけてください。遮光カーテンなどで外光も避けるのが好ましいです。寝る直前にコンビニの照明を浴びたり、テレビやスマホの画面を見ると交感神経が活発になるので、読書や音楽を聴くなど眠りに入る静かな時間をつくるようにします。
室内の温度・湿度の調整
室内温度は、夏25~28℃、冬12~16℃くらい、湿度は50~70%が理想的。冬は、トイレに起きたとき布団の中と室温との差が大きいと、循環器病の危険性が高まりますので、エアコンを利用して適温を保ちましょう。また湿気が多い夏場は除湿を、乾燥が気になる冬場は加湿器などを活用して湿度も調整しましょう。
インテリア
寝室・ベッドルームは日々の疲れを癒す大切な空間。照明やカーテン、ベッドのレイアウトなどインテリアにもこだわることでストレスのない眠りに繋がります。
- 照明・ライティング
蛍光灯やブルーライトなどの明るい光は、体内時計を狂わせたり、寝つきを悪くしてしまう恐れがあります。明るさをコントロールできる照明器具や、オレンジ色に近い暖色系の照明がおすすめ。間接照明やキャンドルの温かく柔らかい光は空間を包み込んで、心地よい眠りに誘ってくれます。
- カーテン
遮光性のあるカーテンは眠りすぎて目覚めが悪くなってしまう可能性があるので、目覚めるときに、自然光を浴びられる程度の隙間を開けて寝るのがおすすめ。
また、睡眠の質を上げるためには色も深く関係するため、カーテンの色にも気を配ってみてください。ブルーやネイビーなどの寒色系は興奮を鎮める効果、ベージュやグリーンはリラックス効果があると言われています。
- レイアウト
テレワークが推奨される今、自宅で仕事をする方も多いと思いますが、寝室と書斎は兼用にせず、眠るだけのシンプルな部屋にするのが理想です。ベッドの位置は、隣家の音が聞こえたり、冬場に冷気で身体が冷えやすくなる窓や壁からは10㎝以上離すのがおすすめ。トイレや風呂などの水回り設備に面した壁も避けましょう。
自分に合う寝具選びを
枕
枕が低すぎたり高すぎたりすることで寝姿勢が崩れてしまい、いびき、肩こり、不眠といったトラブルが起こります。寝姿勢は体型や性別によって異なるため、自分に合う安眠枕を探しましょう。適度なクッション性があって枕が首のカーブにフィットし、首とマットレスの間に生まれる隙間を埋めるようなもの、そして発散性があることが理想です。
抱き枕にも寝ている間の体の負担を軽減する働きがあります。
マットレス
自分の体に合った硬さ・素材・形のマットレスを使用することでストレスのない睡眠が得られます。手でマットレスを押すだけでは寝心地はわからないので、ショールームなどで実際にベッドマットレスで寝てみて、体が沈み込みすぎず、無理のない寝姿勢を保てるものを選ぶことがおすすめ。最低10年程度使える耐久性のあるものが理想です。
布団
敷布団は、体圧の局部集中がなく全体に分散できるものが良いです。身体が沈まない程度の硬さを備え、寝返りをうちやすいこともポイント。掛け布団は、保温性に優れていて重量感がないものが良いです。体への密着性の高いものが理想的。また、布団は洋服と同じで、季節に合ったものを選ぶことが重要です。夏場は冷感効果のある敷布団パッドや薄手のタオルケットを活用したりしましょう。
パジャマ
自分の好きな肌触りで体を締め付けずリラックスできるパジャマを選ぶことが大切なポイント。また、人間は寝ている間にコップ1杯分の汗をかくといわれているため、通気性・吸水性・放湿性の良い素材が好ましいです。季節によって素材や素材やスタイルを変えながら、お気に入りのものを選ぶと良いでしょう。
食生活を考える
夕食は就寝の3時間前までに
食物の消化にはおよそ2~3時間かかると言われており、食事をした直後は胃や腸が活発に働いているためなかなか寝つけません。また胃に食べ物が残った状態で寝ると胃腸に負担がかかり眠りは浅くなるため、夕食は就寝3時間前までに済ませることが大切です。また、寝る直前の食事は体内に脂肪がたまりやすくなるというリスクもあるため気をつけましょう。
睡眠薬代わりの寝酒は不眠のもと
なかなか寝付けないとき、睡眠薬代わりに「寝酒」を嗜む方もいらっしゃると思いますが、体内でアルコールを分解するために肝臓など内臓が働き深い眠りができなくなってしまいます。ニコチンも熟眠感を妨げるため、就寝前はなるべく控えるようにしましょう。また、コーヒー、エナジードリンク、紅茶、緑茶などのカフェインが含まれる飲み物も覚醒作用があるため、就寝前(できれば夕方以降)にはおすすめできません。
安眠によいとされている食べ物・飲み物
肉、魚、卵、乳製品
これらのタンパク質が多い食品に含まれるトリプトファンという必須アミノ酸の一種が、睡眠や体温調節等を司るセロトニンという神経伝達物質の分泌を促し、さらにこのセロトニンが体内時計を調節するメラトニンというホルモンへと変わります。特に、朝食でこれらの食品をを積極的に摂るのが効果的。昼間は元気に活動し、夜には眠くなるという理想のリズム作りを助けてくれます。
たまねぎ
たまねぎ、青ねぎなどのねぎ類は、安眠効果が非常に高い野菜と言われています。中でも、包丁で切るときに目が痛くなる成分「硫酸アリル」には、イライラを解消し、身体を温めながら穏やかな眠りへと導く効果があります。また、身体の疲労回復を促す作用もあるため、翌朝スッキリ目覚めたい人におすすめです。
サニーレタス
レタスは「ねむりを誘う野菜」として欧米では古くから知られています。特にサニーレタスには睡眠を促すといわれる苦味成分のひとつ、ラクチュコピクリンが多く含まれており、他のレタスに比べて栄養価も高めです。
ホットミルク
お腹にも優しく、身体も温まる飲み物。牛乳に少量の砂糖を加えたホットミルクを飲むと、朝まで血糖値が維持されることがわかっています。寝る前に砂糖がたっぷり入ったドリンクを飲むのは避けた方が良いのですが、乳糖や微量の砂糖が含まれている乳飲料なら、空腹感を紛らして寝付きを良くしてくれます。
カロリーが気になる人は牛乳ではなく豆乳にしましょう。豆乳にもトリプトファンの他に、イソフラボンという女性の美容や健康に役立つ栄養素も含まれています。
ハーブティー
ヨーロッパではハーブが薬としても使われており、リラックス効果大。特にカモミールは睡眠導入剤としての効果が高いとされています。いい香りで癒され、心を落ち着かせることは心地良い眠りへ繋がるでしょう。アロマバスやハーブのアイピローなどもおすすめです。
まとめ
睡眠の質にはライフスタイルや生活習慣が大きな影響を与えます。Withコロナ時代、自分の食事や運動など日々の行動を見直しながら、質の良い睡眠時間を確保していきましょう。
長時間眠っても、日中の眠気で仕事や学業に支障がある場合は、専門医に相談しましょう。睡眠習慣の変化は、心身の健康に問題がある場合もあります。